『A Loose Boy』撮影日誌トラブル顛末 「東京篇」 「あー、それ、なんか欠陥モデルらしいんですよね。ジョイントのあたりが脆いらしくて」 なーあああんだあ。そうなの。そうならそうと、早く言ってよ。壊したと思って、びっくりするじゃん。大山は、へなへなと座り込んだ。「で? どうすればいいのん?」関西弁だ。そう、この大山プロデューサーはばりばりの大阪人なのだ。このパワーを止められるならとめてみろ。・・・が、そこで大山は気づいた。自分のせいじゃないとわかっただけでは、なにも問題は解決しておらんではないか。 大山の心中を察したスタッフが素早く電話に走った。ああ、簡単に直ってくれ!電話をする背中に、誰もが念じた。だが、型番を伝えたとたん、修理屋さんは冷たく言った。「あ、それ。それねぇ、うちでは直せないんですよ。欠陥モデルっていうことで、メーカーで直すってことに、決まってるんですよねぇ。残念ですけど」そ、そんなぁ。 スタッフはすかさず、サポートセンターの電話番号を探した。話し中だ。かけ直し。つながった。よーし。「この型のノート・パソコンの画面が消えて・・・」「あ、こちらで修理いたします。着払いで送ってください」「どのくらい時間かかりますか?」「2週間ぐらいです」「その間は・・・?」「申し訳ありませんが、お待ちいただくしかないですね」「でもー、仕事に使ってて、無くなっちゃうと困るんですけどー。替わりのマシンの貸し出しとかないんですか」食い下がるスタッフ。「すいません、そういうサービスはやってないんです」現実は揺るがなかった。こちらで新しいマシンを手配する暇などあるはずがない。出発の時刻は刻々と迫る。大山、ピーンチ! 撮影日誌、ピーンチ! 「しょうがない。大山さん、ここで使ってるもう一台のノート・パソコン、持ってってください。同じモデルだけど、こっちは直したばかりなんで、大丈夫です。僕らは、直って来るまで、なんとかやりくりしますから」「ありがとう!」スタッフの間を通じあう気持ちがあった。結束の固まる、がっちりという音が聞こえた。 大山は、いとおしむように、代理くんを抱きしめると、後ろ姿でスキップしながら、現場へと向かった。しかしこの時、もう一つ大きな罠が待ちかまえているとは、大山は知る由もなかった。(つづく) ああ、悲しき大山。果たして報われる日はくるのか。次回「仙台again篇」を待て! (筆・高枕子/本文一部想像) |