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 ● 7月20日 (第 3 話)

冴(財前直見)と恵子(横山めぐみ)は幼稚園からのつきあい。優等生だった恵子がいつも落ちこぼれの冴の面倒を見てきた。そんな2人の同級生でモデルの向井俊介(川さき麻世)が内科に入院してきた。

「地球上のイイ男はみんなアタシのものよ」
ナースステーションを飛び出していった冴の後ろ姿を見ながら、恵子はいつものようにため息をついた。

「菅野!」
「俊介!」
感激の再会をはたした冴は総婦長の玲子(鷲尾真知子)に直訴して、俊介を総合医療科に移してしまった。俊介は重度の糖尿病だった。モデルの体型を維持するために、無理なダイエットを繰り返していたのだ。

「しっかりした食習慣を身につけないと命取りになるわ」。
久美子(京野ことみ)の言葉に恵子は表情をひきしめた。
「感激だなあ。恵子ちゃんに看病してもらえるんだったら、ずっと入院していたいぐらいだよ」
ベッドの俊介からうっとりと見つめられて恵子は満更でない様子。冴は面白くない。

「昔から女を見る目がないんだから。やっぱりアイツはバカよ」。
同僚の萌子(星野有香)とまゆみ(安西ひろこ)相手にボヤいていると、久美子から書類を手渡された。

「主任から聞いてないの?」
院長(秋野太作)が学会で発表するために、受け持ちの患者の症例レポートを作らなければならない。

「休み返上で学会の資料作りだなんて!」
看護婦たちの不満のほこ先は恵子に向けられた。
「どうしても資料を作りたいなら、主任おひとりでどうぞ」。
まゆみと萌子ばかりか、冴までも「デートで忙しいから」と知らんぷり。

恵子は山田事務長(増田由紀夫)から、看護学校の講師にならないかと打診された。
「あなたのような優秀な人をあんな掃きだめに置いておくのはもったいない」
休みもきちんとあり、給料も今の倍になる。

「私にはナースをまとめていく能力も、患者さんをケアする力もないと、おっしゃりたいんですか!」
恵子は憤然として断った。

「カンパーイ!」。
冴の母親、あき(夏木マリ)が常連客と祝杯をあげていた。商店街のクジ引きでグァム旅行が当たったのだ。そこへ五郎(坂田聡)が雑誌を抱えて入ってきた。

「俊介兄貴ですよ、おばさん」
グラビアには俊介のモデル姿が。
「へえ、これがあの俊介!」
悪ガキ時代の俊介しか知らないあきは目を丸くした。

救急ハート治療室 第3話
高校生の頃、冴と俊介はツッパっていた。五郎は2人の使い走り。そんな3人の尻ぬぐいをいつもしてきたのが優等生の恵子だった。
「変われば変わるもんだね」
あきは感慨深げにつぶやいた。

俊介の病室に後輩のモデルが見舞いに来た。
「みんな入院してくれたら、お姉さんがまとめて面倒みちゃうわよ」
若くてイイ男たちに囲まれて、冴はゴキゲン。俊介も笑顔で応対していたが、後輩たちが帰ると急に頭を抱え込んだ。
「残酷だな。どんな人間も歳をとるんだ」

サインをしてもらおうと冴が差し出したグラビア雑誌を、俊介は振り払った。
2人の様子を廊下から見ていた恵子は
「病気で焦っている患者さんに、仕事の話が厳禁だってことぐらい、新人のナースだって分かることでしょ」

恵子が冴を叱っていると、まゆみと萌子が口をはさんだ。
「ちょっと言いすぎじゃないですか」
それでも恵子の怒りは治まらなかった。

「男を捕まえるためだけにナースやってるなら、今すぐ止めてほしいの。きちんと仕事してるまわりが迷惑するわ」
「分かったよ。俊介にはもう近づかない。後は恵子に任せるよ」
いつになく冴はおとなしく引き下がった。


冴がブルーな気分で帰り支度をしていると、公平(吉田栄作)が声をかけてきた。
「たまには食事でもどうだ」
久美子も一緒というのが不満だが、冴の返事はもちろん
「行きまーす!」
公平が連れて行ってくれたのはもんじゃ焼き。

救急ハート治療室 第3話
「幼なじみの主任が困っているのに、あんたはのんきね」
「あたしだって苦労しているのよ」
またしても久美子と冴は口げんか。
「いい加減にしろ!医師とナースのチームワークは患者にとっても大切なんだぞ」
公平に叱られて2人はうなだれた。

その夜、深夜勤務の恵子がナースステーションで学会の資料を作っていると、萌子が血相を変えて飛び込んできた。
「向井さんが!」
俊介が屋上でワインをラッパ飲みしていた。

「俺はモデルとしてもうダメなんだ。若いヤツがドンドン追い抜いていくんだ。優等生のお前には俺の気持ちは分からないよ!」
「あなたはモデルじゃなくとも、イイところがたくさんあるわよ。ちゃんと治療して元気になって」

説得しようと近づいた恵子を俊介が抱きしめた。
「高校生の時から、ずっと憧れていた。俺のそばにいてくれるか」
俊介は恵子にキスした。

「昨夜の屋上でのことは報告しなくていいのですか?」
翌朝の申し送りで萌子が切り出した。
「主任と患者の向井さんがキスしていたんです」
まゆみも追い打ちをかけてきた。
「ナースとしての自覚が一番足りないのは主任です」

2人は冴の味方をしたつもりだったが、当の冴は「そういう噂話は大っ嫌いなんだよ」と吐き捨てた。
「患者を本気で好きになって何が悪いんだ。そんなことでガタガタ騒ぐな」
冴のものすごい剣幕にまゆみと萌子は言葉を失った。
「向井さんとキスしてたのは本当です。お騒がせして申し訳ありませんでした」
恵子は深々と頭を下げた。


翌日、恵子は婦長室を訪れた。
「私には彼女たちをまとめていく器量などありません。ナースを辞めます」
事務長の勧めてくれた講師の話を受けるつもりだと打ち明けた。冴はナースステーションで学会の資料作りをしていた。

「そんなことしても無駄ですよ。主任、辞めるみたいですよ」
萌子が冴に耳打ちしていると、恵子が姿を現わした。
「あんた、それで本当にいいの!」
冴は恵子に詰め寄った。

そこへ春子(幸田まいこ)が走ってきた。
「向井さんが勝手に退院するって荷物をまとめているんです」
冴と恵子は俊介の病室に向かった。


カンテーレ