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 ● 8月10日 (第 6 話)

まゆみ(安西ひろこ)の様子がおかしい。カンファレンス中に、田中智樹(橋 龍吾)という青年が訪ねてきた。恋人らしい。ところが 「何しに来たのよ。帰ってよ」と表情を強張らせた。

職場に突然やって来た智樹も非常識だが、まゆみの態度はいささか度を越していた。公平(吉田栄作)のことを新しい恋人だと偽ってまで、智樹を追い返したからだ。

「あんなに邪険にしなくてもイイだろ。」
見かねた冴(財前直見)がたしなめても、まゆみは「あんなヤツ、別になんとも思ってないから」と吐き捨てた。


まゆみは仕事に対しても投げやりな態度を見せるようになった。そのくせ男性患者の前ではやたらと愛想がいい。
「ちっとも言うことを聞かないんだから。」
恵子(横山めぐみ)はため息をついた。

かたや冴は公平に妻子があると知ってから元気がない。
「20代の頃はいくらでも男が寄ってきたのに。」

救急ハート治療室 第6話
冴もため息をついていると、公平の娘の未来(碇由貴子)を見つけた。
「パパ、この病院に好きな女の人がいるんだよ。」
冴にしてみればダブルショック。公平は現在不倫中ということか。

「あんたが相手なんでしょ。」
「何わけの分からないこと言ってるのよ。」
冴は公平の不倫相手が久美子(京野ことみ)だと一人勝手に決め込んで斉藤(大滝 純)にボヤいた。

「あんたがしっかり捕まえておかないからいけないのよ。」
「ボクの久美子に限って、不倫なんてあるわけない。」
それでも公平に妻子がいるとは斉藤にとっても初耳だったらしい。


まゆみと萌子(星野有香)がつかみ合いのケンカをした。萌子の恋人をまゆみが横取りしたという。
「あんなダサイ男、単なる遊びよ。」
「なんやて!。」
冴が止めて入ったが、萌子の怒りは収まらない。

他人の痴話ゲンカの仲裁よりも、冴が気になるのは自分の結婚相手。入院患者の一樹(剣太郎セガール)に占ってもらった。
「結婚線がはっきりと浮かび上がっています。今年中です。」
「やったあ!。」

しかし障害が一つあるという。
「子供です。」
未来のことだろうか?


ナースたちの健康診断の結果が出た。ところがまゆみだけはなぜか受けていなかった。
「今回はパスしたんです。」
自分の健康管理もナースの仕事のうちだ。
「男と遊ぶ暇はあっても、検査を受ける時間はないって言うんか。」
「何ですって!。」

またもや萌子とまゆみがやりあった。冴はいきさつを恵子に耳打ちした。
「まゆみさん、明日から産婦人科へ応援に行って下さい。少しウチの科を離れて頭を冷やしてきなさい。」
「そんな!。」

産科の患者はもちろん女性ばかり。しかも待合室はアツアツの新婚カップルだらけ。独身のナースにしてみれば面白くない。
「あの科には近づきたくないわね。」
冴は他人事のようにつぶやいた。

「菅野さんと明日から2人で産科へ行くように。」
「エー!どうしてあたしも一緒なのよ。」
しかし恵子は冴の不平に耳を貸そうとはしなかった。


その夜、冴は何とか恵子を懐柔しようと、スナック『あき』に誘った。
「わがまま言ってんじゃないわよ。恵ちゃんの言うことをちゃんと聞かないとクビだよ。」
母親のあき(夏木マリ)が余計な口をはさむものだから冴の思惑は水の泡。

しかも冴を目当てに毎夜通いづめの五郎(坂田聡)にいたっては「ボクは冴さんの子供がほしい」と言い出す始末。
あきは冴を生んだ頃を思い出して「こんなに憎たらしい娘に育つとわねえ」とぼやいた。


救急ハート治療室 第6話
「仕方ないから、お恵の顔を立てて、明日から産科に行って、母性本能でも磨くことにするか」
と冴も観念した。ちゃっかりと未来を手なずける予行演習のつもりだなんてことは、恵子もあきも知らない。

翌日から冴とまゆみは産科を担当することになった。
「まゆみ、とにかく頑張ってみようよ。」
冴は切り替えが早かったが、まゆみは「あたしは嫌です」と頑な態度を崩そうとはしない。

しかも陣痛に苦しむ妊婦をあろうことか、突き飛ばしてしまった。
「苦しむのが嫌なら、最初から子供なんか作らなければいいのよ!。」
まるで妊婦が憎くてたまらないかのようだった。


幸い大事には至らなかったものの、まゆみの行動はナースとして見過ごすことのできないものだった。
「流産していたらどうするつもりだったの!。」
恵子が問い詰めると、まゆみは開き直った。
「甘えたことを言うような女は流産すればいいのよ。」

まゆみは以前からプライベートではいい加減なところがあったが、仕事は一生懸命にこなしてきた。あまりの変わりように、冴はたまりかねて口をはさんだ。
「あんた、最近おかしいよ。」

そこへ智樹が姿を現わした。
「まゆみ。」
「あんたなんかの顔、見たくないのよ。帰って!。」
まゆみはナースステーションを飛び出していった。

冴は智樹を中庭に連れ出した。
「アンタ、本当にまゆみに惚れているんだね。」
まゆみと智樹は幼なじみ。智樹はわざわざ故郷の北海道から上京してきた。
「昔はもっと地味で清楚な感じだったんです。」

高校を卒業したら結婚する約束だったのに、まゆみは突然ナースになりたいと言い残して1人上京してしまった。
「手紙を書いても、ちっとも返事くれなくて。やっと見つけて、東京に会いに来たんです。俺、諦めませんよ。」


まゆみと萌子がまたぶつかった。萌子の恋人とまゆみがまた会っていたらしい。
「いくら子供が産めへんからって、他人の男とってもええってことにはならんやろ!。」
怒りにかられて萌子はつい口走ってしまった。まゆみはさっと顔色を変えると、走って行った。

まゆみは高校生の時に卵巣ガンの手術を受けていた。
「あたしも知らなかったのよ。」
恵子はまゆみが産科の患者を突き飛ばしたことを報告に行った時に、総婦長から打ち明けられたという。まゆみの荒れている理由はこれだった。智樹に対する思いは決して冷めたわけではなかった。

「産科になんて行かせるべきじゃなかったわ。」
恵子は自分を責めた。
翌日、まゆみは恵子に告げた。
「わたし、病院を辞めさせていただきます。」


カンテーレ