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 ● 8月24日 (第 8 話)

「あたし、子供大好きだから頑張ります。」
冴(財前直見)が病院の恒例イベント、サマーコンサートの実行委員に選ばれた。憧れの公平(吉田栄作)からの指名とあって、冴は二つ返事で引き受けた。

「あたしの美しさと優しさと音楽的才能を見抜いていたのね。」
ご機嫌な冴がコンサートのポスターを廊下に貼っていると、首にカメラをぶら下げた少女が近寄ってくるなり、破り捨てた。
「何すんのよ!」

冴が怒ると、その表情を面白がってカメラのシャッターを押した。
「叫んでも無駄よ。あの子、耳が聞こえないのよ。」
久美子(京野ことみ)の言葉どおり、冴が怒鳴っても知らんぷりのまま、少女は逃げていった。

「耳が不自由な上に、生後すぐに母親を亡くして、わがままに育ってしまいました。ご迷惑をかけると思いますが、よろしくお願いします。」
冴たちの前で頭を下げたのは少女の父親、神代征二(長谷川初範)。世界的な指揮者だ。

娘の初音(谷口紗耶香)は交通事故で肋骨にひびが入っていた。けがは順調に回復していたが、精神的に不安定になると他人の物を盗んでは壊すという行動が見られた。
「精神的なケアをよろしくお願いしますね。」
総婦長(鷲尾真知子)から担当に指名されたのは冴だった。

「初音ちゃんが!」
かなえ(宮川由起子)が血相を変えて走ってきた。火災報知器のベルが響いている。冴が初音の病室に駆けつけてみると、初音はMDカセットを燃やして、カメラでパチパチと撮っている。よく見ると冴の私物だ。

「こんなことして、何が面白いの!」
恵子(横山めぐみ)が消化器で火を消した。
「これはあたしが預かっておくよ。」
冴は初音の手からカメラを取り上げた。

「ちゃんと弁償させていただきます。」
しきりに謝る神代に冴は譜面を差し出した。サマーコンサートの課題曲だ。
「ピアノを教えてもらえませんか?」
「私でよければ、お手伝いさせていただきますよ。」
「ヤッター!」
呆れ返る久美子などお構いなしに、冴は大はしゃぎした。

「世界的に有名な指揮者なのよ。これがまたイイ男でさ。」
家に帰るなり、冴は早速あき(夏木マリ)と五郎(坂田聡)相手にのろけだした。
「でも、その女の子がひねくれているのも分かるような気がするね。」

あきが口をはさむと、冴はむきになって言い返した。
「あたしは何でもかんでも親のせいにするヤツは嫌いなんだ!」
子供には厳しく、イイ男には甘い。
「これがあたしのモットーなんだ。」
母性のカケラもない冴だった。

深夜勤務の冴が1人きりで巡回していると、階段の踊り場から身を乗り出している初音を発見した。何かを取ろうとしきりに手を伸ばしている。
「危ない!」
しかし初音には聞こえない。ようやくジェスチャーで戻らせた。

初音が取ろうとしていたのは1枚の写真。冴が代わりに取ってやると、初音は奪うように受け取ると逃げていった。
「ったくしょうがないんだから。」
初音の心を開かせるにはどうすればいいのか。冴にも分からない。


翌日、初音がナースステーションに姿を現わした。
「少しは部屋でおとなしくしてなさいよ。そしたらカメラを返してあげるから。」
冴が追い出そうとすると、初音は写真アルバムを差し出した。花、木、空、病院の風景、そして冴の怒った表情など、どれもうまく撮れている。

「いい写真がずいぶんあるじゃない。」
冴が思わず微笑むと、初音は冴の腕を引っ張って病室へ連れていった。ベッドの上には、冴のさまざまな表情のスナップ写真が置かれていた。

救急ハート治療室 第8話
初音の差し出したメモには『昨日はありがとう』と書かれていた。冴は初音の顔を両手で抱きしめた。いつしか2人とも笑っていた。

「あの子にとって、カメラと写真が耳と言葉なんだよ。」
「あの子の目は、あたしたちよりもずっと多くのことを見ているのかもしれないわね。」
初音の撮った写真を見せると、恵子も理解してくれた。

そして初音の写真を廊下のカベに張り出して、ささやかな写真展をすることにした。
「いつの間に撮ったんやろ。」
「よく見てるわよね。」
萌子(星野有香)やまゆみ(安西ひろこ)は、自分たちのスナップ写真を素直に喜んだ。


冴は初音の気持ちをもっと知りたくて、手話を学ぶことにした。
「本人に習えばいいのよ。」
久美子のアドバイスで初音本人から教えてもらうことにした。
「お願いします。」
冴が照れながら頭を下げると、初音は抱きついてきた。うれしさが冴の全身に伝わってきた。

冴は初音のアルバムに父親の写真がたくさんあるのに気づいた。ところがどれも横顔ばかり。
「どうしてなの?」
冴が手渡した紙に初音は『パパは私が嫌いなの』と書いた。

堰を切ったように、初音は胸の内をつづり始めた。
『パパは音楽の聞こえない私にがっかりしているの。私だって音楽を感じられるのに』。
聞こえない耳の代わりに、初音は心で自然の変化や周囲の人々の感情を理解してきた。しかし父親は彼女を何も感じない娘として接してきた。

「でも、あんたには写真があるじゃない。この写真をお父さんに見せよう。きっと初音の気持ちを分かってもらえるよ。」
冴は手話で伝えた。しかし初音の表情は浮かなかった。


神代が小児科の子供たちに楽器の演奏を教えにやって来た。冴は写真アルバムを手渡したが、神代は子供たちにかかりきりで見ようとしない。すると初音はアルバムを奪い取ると床に叩きつけた。さらに子供たちから楽器を取り上げて暴れた。

「初音!なんてことするんだ。」
初音はもどかしげに紙に走り書きした。
『コンサートなんかさせない。音の出るものなんか、この世からなくなってしまえ』。

神代は初音を殴った。そして手話と言葉で伝えた。
「楽器を壊すような人間は私の娘じゃない!」
初音は神代の腕を振り払うと、逃げていった。


カンテーレ