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 ● 9月14日 (第 11 話)

退院間近とみられていた黛一樹(剣太郎セガール)の容態が急変した。
「黛さん、分かりますか。」
意識を失い、やがて呼吸も止まった。
「人工呼吸よ。」

久美子(京野ことみ)と公平(吉田栄作)の必死の治療でなんとか心臓は再び動き始めた。
「いつまた呼吸が止まってもおかしくない状態だ。」
「そんな!」
公平の説明に冴(財前直見)は絶句した。


セントマーガレット病院は慢性的な経営難に陥っていた。累積赤字は限界に近づきつつあった。理事長の意向を受けて、院長の吹雪(秋野太作)は採算の合わない科の閉鎖を決めた。
総合医療科はとりあえず存続が決まったが、事務長の山田(増田由紀夫)はナースたちに長期入院患者へ退院もしくは転院を勧告するように命じた。

病院としては次々と新しい患者を受け入れないと利益が上がらないからだ。一樹も慢性腎不全ですでに半年以上、入院している。
「黛さんはかまいません。」
事務長は口をにごした。病院が一樹から多額の寄付をもらっていることはナースたちにとっても周知の事実だった。


そのナースたちも賃金カットや派遣ナースへの切り替えがウワサされて落ち着かない。しかし冴が沈み込んでいるのは一樹のことが頭から離れないからだ。
「なんで気づかなかったんだろう。」

冴はいつも一樹に自分の悩み事を聞いてもらっていた。患者である一樹に甘えていた。それなのに一樹の異常を見過ごしてしまった。
「なんて無神経な女なんだろ、最低だよ。」
冴は自分を責めた。


一樹が意識を取り戻した。
「あなたの声が聞こえました。ボクを呼んでいる気がしました。」
一樹はベッドから冴に微笑みかけた。

「良かった!」
冴は思わず一樹に抱きついた。とはいえ一樹の容態は依然として危険な状態にあった。
「ご家族に連絡をとってくれ。」

公平は久美子に命じた。一樹は早くに両親を亡くしており、遠縁にあたる親戚しかいないらしい。久美子は退院勧告の件を公平にぶつけた。
「ある程度の合理化は仕方ないと、オレも思っている。」

久美子はもう一つ、最近病院内でささやかれているウワサについても聞いた。
「ニューヨークの病院へ行かれるって本当ですか?」
「もしそうなればオレよりも優秀な後任に引き継いでもらうよ。」
公平が言下に否定してくれることを信じていた久美子にはショックだった。


久美子がナースステーションに顔を出してみると、書類を手にしたナースたちが口々に不満の声を上げていた。来月から一律給料20パーセントカット。ボーナスは50パーセントカット。
「やってられへんわ。」
「ひどすぎる。」

萌子(星野有香)もまゆみ(安西ひろこ)も憤懣やるかたない。
「しかも知り合いの会社の健康診断を営業してきてほしいって。」
主任という立場上、同僚たちに病院側の意向を伝えなければならない恵子(横山めぐみ)も、気持ちは一緒だった。

しかし久美子だけは自分に言い聞かすようにつぶやいた。
「でも、あたしは負けないわ。みんながこの総合医療科を見捨てても、あたしは最後まで戦うわ。」


「何か聞こえませんか?。」
冴が一樹の点滴を交換していると、遠くから花火の音が響いてきた。ベッドのかたわらには花火を見ている親子の絵が貼られていた。一樹が小学生の時に描いたものだという。
「最初で最後でした。両親と花火を見たのは。」

救急ハート治療室 第11話
一樹が冴に両親のことを話したのは初めてだった。
「あなたには自分を信じる力がある。だから自分も他人も幸せにできます。」
冴のほうが一樹から励まされた。

公平の一人娘、未来(碇由貴子)が鉄棒から落ちて運ばれてきた。右とう骨を亀裂骨折していたが、他には大きな外傷はなかった。
「担当はもちろん、あたしよ。」

冴は未来の担当をかってでた。娘を手なづけて、父親のハートもついでにゲットしようというのが狙い。ところが未来は公平にまとわりついて離れようとしない。
「イヤ!未来はパパといる。」

母親を早くに亡くし、先月には長らく面倒をみてくれていた叔母まで急逝。父親まで失ってしまう不安が未来の胸の中にあるらしい。
「そりゃ寂しいよね。」
冴はつきっきりで未来の面倒をみた。


一樹の親戚がやって来た。時田勝(小林すすむ)と里子(上村依子)の夫婦、中年の徳永静夫(石井愃一)、そして若い中本玲奈(林希)。病状を説明する公平の隣には、久美子と冴も同席した。

「生命の危険も考えられます。ただ植物状態になった場合でも、黛さんご本人は延命措置を拒否されています。」
親戚連中が顔色を変えた。

「あいつらが死んだら、今もらっている金はどうなるんだ。」
4人が心配なのは一樹の容態ではなく、ばく大な遺産のこと。冴は怒りを殺して聞いた。
「一樹さんに会わせたい方はいないんですか。」


一樹には赤ん坊の時に別れた妹がいるらしい。
「養女に出したんだから関係ない。」
「遺産を持っていかれたらたまんないよ。」

ついに冴が怒りを爆発させた。
「あんたたち、金のことしか頭にないのかよ。いくら遠縁だって、人が亡くなろうって時に、そんなことしか言えないのかよ!」
冴は親戚連中を追い出してしまった。


「オレの娘だからって考えてくれなくていい。」
冴は公平から未来を特別扱いしないでほしいと頼まれた。未来は不安神経症気味だという。
「それでもアイツはオレと2人で生きていかなくちゃならないんだ。だから余計な期待を持たせたくないんだ。」

すかさず冴は聞き返した。
「未来ちゃんのお母さんになってくれる人を探せばいいじゃないですか。」
「そんな簡単な問題じゃない。」
公平はきっぱりと打ち消した。


一樹の容態が再び急変した。なんとか意識は回復したが、目覚めた一樹の口調は弱々しかった。
「ボクはもうダメなんでしょうか。」
「そんなことないですよ。」

しかし冴の取り繕った笑顔を一樹はすぐに見抜いた。そして花火の絵に視線を向けると「あの頃は一番楽しかった」とつぶやいた。
「あたし、妹さんに連絡とります。どこにいるのか分からないんですか。」
妹の名前は田代かおり(藤谷文子)。

「捜してくれよ、大至急。」
冴は五郎(坂田聡)の友達を総動員して、かおりを捜し出すことにした。



カンテーレ